連載「素顔の選手《REDSげんき》」
肥田野 蓮治(ひだの れんじ)36 FW
今回は、肥田野蓮治選手にお話を伺いました。特別指定選手だった2025シーズンは、初出場の岡山戦でいきなり決勝点を決めた。大卒1年目の今季は、百年構想リーグで15試合出場4得点。そんな期待のアタッカーが自身のプレースタイルと心境の変化を、言葉にしてくれました。
「開幕スタメン」「得点はマスト」「浦和の顔になりたい」
並んだ言葉は、どれも強い。大卒新人が語ったものとなれば、なおさら思い浮かぶのは強気なアタッカーの姿だ。
ところが、普段の肥田野選手は違う。貪欲にゴールを狙うピッチ上の姿からは想像できないほど控え目で、真面目で、寡黙。ビッグマウスとはほど遠い。
「私生活は結構マイペースって言うか、基本しゃべるほうでもないですし、ゆっくりした感じの性格です。ピッチに入ったら相手とか年齢とか関係なく言えるタイプなんですけど、いつもは気を遣うと言うか……ガツガツ行く感じはありません」
そんな性格は、子供の頃から変わらない。
サッカーを始めた街クラブ、東習志野FCでは「一番上手い」圧倒的なエースだったが、みんなを言葉で引っ張るタイプではなかった。ナショナルトレセンに選ばれるほどの実力を持ち、小学校高学年になるとプロを目指す上級者ばかりが集まるFC東京のアドバンスクラスにも通うようになったが、「いま以上に話さない選手でした」と言う。
千葉県内のJリーグアカデミー、柏や千葉からも誘いがあるなか、FC東京U-15深川に進んだが、中学時代は身長が伸びず苦しんだ。フィジカルで優位に立つチームメイトとの競争に勝てず、試合出場は限られた。
FC東京のユースには昇格できなかったが、関東第一高校に進学し、高校選手権に2度出場。3年時には10番を背負ってベスト4まで進み、松木玖生(サウサンプトン)やチェイス・アンリ(レッドブル・ザルツブルク)と並んで優秀選手にも選出された。サイドバックやボランチ、シャドーでプレーして、バランサーやパサーとして評価された。
「中学・高校はスルーパスを通すことに生き甲斐を感じるタイプでした。アシストの方が偉いと言うか、気持ちよかった。パスを出して、あとはFWが決めるかどうか。決めたら自分のおかげ、外したらなにしてんの? みたいな感じの選手でした」
そんな自身のプレースタイルや発言が変わったのは、本格的にFWでプレーするようになった大学2年生のときだ。
「FWは自分から要求しないとボールが来ない。前線をやることで、自分の意識や発言も変わってきました」
得点を決めて勝つ喜びを感じ、明暗を分ける責任を感じるようにもなった。それは中盤以降でプレーしていた頃には味わえなかった感覚で、肥田野選手のなかに強気な一面が芽生え始めた。
高校時代に8cm伸びた身長は、大学に入ってからも伸び続けた。筋力トレーニングにも力を入れた結果、イメージするプレーを実現する切れのある身体、当たり負けしない強い身体が出来上がった。
「FWに転向した時期、ゴールを決めたいと思うようになった自分の意志、そして身体の成長が全部マッチしたんです。大学2年以降、一気に成長したと感じています」
当然、ゴールへの意欲も高まっていく。
「周りにはテクニックのある上手い選手がゴロゴロいたので、そういう選手たちとの違いを出してプロに行くためには、一人で勝負できる選手にならなきゃと考えたんです。まずゴールを見ることを意識するようになりましたし、行けるなら全部自分で勝負するという気持ちになりました。大学時代に、単独でゴールを目指す力を身につけたんです」
大学4年生だった昨年3月に特別指定選手となり、11月の第38節・岡山戦で初先発。その試合で、決勝点となるJリーグ初得点を奪う衝撃のデビューを飾った。そして今季、プロ1年目で迎えた百年構想リーグで15試合出場4得点。フル出場は1試合もなかったものの、限られた出場時間のなかでチームのトップスコアラーとなった。
それでも、目指しているのはさらなる高みだ。
「全然(得点が)足りません。プロになって自分らしくない得点、ワンタッチやクロスに飛び込んでの得点が増えたところは評価できますが、出場試合数が少なかったし、徐々に試合に絡めなくもなりました。あとは、もっと決められるチャンスがありました。そこで決めていたら出場時間も伸びて、二桁得点も狙えていたと思うので、得点数に関しては、全然満足していません」
自分自身の課題は見えている。足下の技術、寸分のズレもなく味方にパスを届ける技術を磨きたい。そういった苦手な部分を磨かない限り、今後のさらなる活躍を呼び込めないことは自覚している。その一方では、確かな手応えもある。
「途中加入の選手や怪我から復帰してきた選手がいて、すごい競争が生まれてきたなかでスタメンを確立できませんでした。まだまだだと思います。ただ、プロ1年目でそういう経験ができるところまで来れたという思いがありますし、成功体験も積めました。収穫も課題も感じることのできた、自分にとって意味のある半年だったと思います」
夏から始まる新シーズンへ向けても、強気の姿勢は変わらない。これまでどおり自身の感覚を包み隠さず、できると思ったことをそのまま口にするつもりだ。
「自分で発言したことをどんどん実現して、さらに新しい目標を作るというのが、自分のスタイルだと思うので」
試合中の強気の自分と、私生活の控え目な自分。どちらが、より好きなのか。
「う~ん……ピッチは何も考えず自分の思ったことを表現できる場所だと思っているので、ピッチにいる自分の方が好きです」
ピッチ内外のギャップも魅力の肥田野選手は、さらなる成長を誓って新シーズンに挑む。
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