連載「素顔の選手《REDSげんき》」
工藤 孝太(くどう こうた)15 DF
今回は、3年半のレンタル移籍から帰ってきた22歳の工藤孝太選手にお話を伺いました。生まれ育った和歌山県田辺市から埼玉県に引っ越した当時の思い出、期限付き移籍先での学び、浦和レッズでのリーグ戦デビューに懸ける意気込みを、余さず語ってくれました。
浦和から遠く離れた和歌山県田辺市。そこが、工藤選手の故郷だ。
「めちゃめちゃ田舎です。すぐ近くに山があって、緑がいっぱい。あとは畑だらけ。それ以外は何もないような場所です。子供の頃は山に行って秘密基地を作ったり、川に行って飛び込みをしたり。家の隣の空き地で缶蹴りとかもしていました」
田辺市は、世界文化遺産にも登録されている熊野古道の分岐点にあたる。自然と歴史が融合した街で、のびのびと育った。
サッカーとの出会いは小学1年生のとき。地元のクラブチーム「南紀JSC」でボールを蹴り始めた。当時から身体が大きく、足も速かった。すぐにチームの中心となった息子を、両親が温かく見守っていた。
「家の方針が好きなことをやれという感じで、子供がやりたいことを支えてくれる幸せがありました」
両親とも元体操選手。中学校の体育教師だった父は体操部の顧問でもあり、選手育成の手腕を評価されて、県から「スポーツ優秀指導者賞」を受賞するほどだった。そんな父に厳しさはなく、いつも褒めてくれていた。
それでも、寒い日に準備運動を怠ったせいか身体の動きが鈍かったことがある。あの日、珍しく「アップや準備はしっかり」と注意されたことは、いまも忘れていない。
転機が訪れたのは12歳のとき。
3歳上の姉は芸能の道を志していた。そこに、レベルの高いチームでサッカーがしたいという自身の夢も重なり、関東近郊のJリーグクラブのアカデミーの門を叩いた。結果、浦和レッズのセレクションに見事合格。埼玉県への引っ越しを決意した。父一人が地元に残り、母、姉と3人での新生活がスタートした。
「とにかく応援がすごい。あと、テレビで見るような選手がたくさんいるチーム」
浦和レッズに、そうしたイメージを持っていた孝太少年は、中学進学と同時に埼玉県に移り住み、アカデミーの一員となった。そこで環境面の違いに驚かされる。
「当時は中学生にもレッズのウエアが一気に配られたんです。そんな経験は初めてでした。袋にパンパンに詰められたウエアを受け取って、ものすごくテンションが上がりました。最初にもらったウエアは赤。ものすごく目立っていて、誇らしかったです」
とはいえ、初めての転校。学校に馴染むまでには半年くらいかかった。人見知りの面もあり学校が苦痛だった。通学時間だと身体が反応するせいか、朝の情報番組のテーマ曲が「めっちゃ嫌いになった」と言う。
だが、そこは「サッカーのまち」浦和。サッカーが人の輪を広げてくれた。
浦和レッズのジュニアユースでプレーしている選手だと知れ渡ると、男子を中心に自然と友達が増えていった。
ピッチの上では、フィジカルだけで活躍できた小学校時代と違い、壁にぶち当たった。「普通にやっていてもうまくいかない」と頭を使うようになり、当時はFWとしてオフ・ザ・ボールの動きや出足の一歩を磨いた。
そして中学3年生のとき、DFを任された試合で上出来のプレーを披露して道が開ける。「なんかよくね」という自身の手応えと、「いいやん」というコーチの評価が一致した。自信が芽生え、ネガティブな感情は一切なかった。
そこからの歩みは早かった。ユースに昇格し、高校2年生の冬にキャンプに呼ばれると、3年生に進級した2021年5月にプロ契約を締結することに。「昨日まで学校に行っていた」普通の高校生の生活が、ガラリと変わった。
ところが、プロの世界は想像を遥かに越えて厳しかった。
プロ1年目の2021シーズンからの2年間、浦和レッズで出場した公式戦は2試合のみ。「試合に絡めるレベルになかった」と、当時を振り返る。
2023シーズンに育成型期限付き移籍で藤枝MYFCに加入すると、5月17日の磐田戦でJリーグ初出場を記録。翌年にはギラヴァンツ北九州へ籍を移して、36試合出場2得点。左CBの定位置を掴みフル稼働した。さらに、2025シーズンにJ1のファジアーノ岡山へ移籍。ここでは3バックの左に定着して25試合出場。百年構想リーグでもピッチに立ち、自信を膨らませた。
「(3年半で)試合経験を多く積めたことが大きかったと思います。あとはメンタル的にも成長できました。出られなかった経験、1年間フルで戦った経験、ポジション争いに打ち勝った経験をして、ケガもした。本当にたくさんの学びがありました」
浦和レッズに復帰したいま、「3年半前の自分とは全然違う」と言い切る。
試合に出ることで得たことは多い。試合へ向けての4日間または3日間の練習への向き合い方、身体のケア、食事の内容、何時に寝るべきか……。試合を基準とした自分なりのサイクルを確立することができた。
外から浦和レッズを見て気づいたこともある。
「ホントすごいチームだなって。だからいま、レッズで闘える誇りと責任を感じています。あれだけ応援してくれるサポーターはどこにもいない。僕も、アカデミーの頃はトップが勝ったらめっちゃ嬉しくて、負けたらめっちゃ悔しかったんです。レッズのユニホームを着て闘う立場になって感じるのは、そのような人たちの想いも背負っているということ。僕たちの頑張り次第で彼らの気持ちを変えられるということです」
この3年半、浦和レッズの情報を見るたびに、あのユニホームを着てスタジアムに立つ自分を想像していた。離れていた日々があるから、浦和レッズに対する想いは人一倍強い。胸の内には当然、熱い想いがある。
「ここからがスタートです。いち早く試合に出て、信頼される選手、安心させられる選手、期待してもらえる選手になりたいです」
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