連載「素顔の選手《REDSげんき》」
林 幸多郎(はやし こうたろう)18 DF
今回は、百年構想リーグ終了後の今年7月、FC町田ゼルビアからの完全移籍で加入した林幸多郎選手にお話を伺いました。子供の頃から文武両道で、試験の成績は常に学年一桁。「勉強は趣味」と語るプロ選手が、学ぶ楽しさとサッカーの面白さを教えてくれました。
学ぶこと、知識が増えることが好きで、いまも勉強を続けている。
この夏、町田から浦和レッズの一員となった林幸多郎選手は、プロサッカー界において極めて稀な選手ではないだろうか。
「すごいことをしている感覚はなくて、みんなが趣味でゲームをしているのと同じレベルと言うか……。僕にとって勉強は、好きで、楽しい、暇つぶしです。お金もかからないし。プロサッカー選手は練習が終われば自分の時間がかなりあるので、他の選手は何をしているんだろうなとは思っています」
明治大学法学部で法律を学び、2023年に横浜FCでプロとなって以降も司法試験合格を目指していた。プロサッカー選手としての成長と司法試験の合格。とてつもなく高い二つのハードルを、並行して飛び越えようとしていたのだ。
ただ、試験は週末に行なわれる。当然、試合と被る。プロ1年目からチームで4番目に多い出場時間をマークし、移籍した町田でもレギュラーの座を勝ち取っていた状況では、受験のために本業のサッカーを休む選択肢はなかった。
現在プロ5年目。今季から籍を置く浦和でも出場機会に恵まれている。開幕から5試合連続でピッチに立ち、第5節のアビスパ福岡戦では途中出場で貴重な同点ゴールをゲット。最終的に3-2の逆転勝利を呼び込む活躍を見せた。
そんな充実したプロ生活のなかでも、学ぶことへの情熱は尽きない。司法試験合格から少し方向性を変えて、新たに目指す平日に受験できる選択肢の詳細は、いまのところ内緒。「合格したら報告します」と、照れ臭そうに笑う。
生まれは佐賀県嬉野市。子供の頃から、机に向かうことは少しも苦ではなかった。
両親は子供の好きなことを応援してくれるタイプで、特に教育熱心だったわけではない。「勉強しなさい」と言われた記憶はないし、塾に通ったこともない。それでも中学受験を突破して中高一貫校の県立香楠中に進学。同時に、サガン鳥栖のアカデミーにも合格してサッカーを続けた。二足の草鞋を履く生活は、その当時からである。
「小学生の頃は、とりあえず宿題はしっかりやる子でした。中学は周りが勉強をしている環境だったので自然と。鳥栖の育成でサッカーをしていたので両立はすごく大変でしたが、ある種負けず嫌いと言うか、勉強でも結果を残さないと、という感じで詰め込みました。そのおかげで基盤ができたんです。自分がどれぐらい勉強すれば覚えられるか。そうした感覚や習慣が身についたのが良かったんじゃないかと思っています」
高校はエスカレーター式で上がれる鳥栖高ではなく、一般受験で佐賀北高に進学した。それは鳥栖のユースの活動拠点が鳥栖市から佐賀市に移ったためで、負担が少ない高校を選び直したわけだ。同じく進学校の佐賀北高で、成績は常に一桁台だった。
ちなみに、男三人兄弟。1歳上の兄は佐賀大学医学部の5年生。「サッカー1本」という5歳下の弟は早稲田大学のア式蹴球部で活躍する3年生。「自分も弟もサッカー推薦です」と控えめに言うが、学校の成績が良くなければ選ばれる資格はない。
鳥栖U-18では1年時から試合に絡み、3年時にはキャプテンを任された。そのうえで学業も頑張っていたので、周囲とのギャップを感じることも少なくなかった。とはいえ、「どう思われようが周りは気にしていませんでした。『すごいね』と言われるだけなので。そうかぁって感じです(笑)」
人と違うことを恐れず、物事は論理立てて考える性格。「普段から結構考えています」と言う25歳は、浦和への移籍にも確固たる思いがある。
「個人的な成長を求めて移籍しました。町田では一定の評価を得て、ストレスを溜めずにサッカーをやれていましたが、自分の成長を考えたとき、環境や志向しているサッカーを変えた方が自分にできることを増やせると思ったんです。アジアでの戦いでも、1対1で勝てるかと言われたら『それはムリだな』って感じだったので。うまくいかない可能性があったとしても、チャレンジした方がいいと思って浦和に飛び込みました」
加入して2カ月弱、新しい環境でも趣味の勉強に時間を割いている。予定がない日は、練習後の午後2時か3時にはクラブハウスを後にしてカフェに移動。そこから6時頃まで、お店を転々として参考書に向き合っている。
「楽しいですよ。勉強は絶対に裏切らないと言うか……。サッカーは、いろいろなものに左右されるじゃないですか。チームスポーツで、相手もいるので、自分の頑張りだけじゃどうにもならない部分がある。だけど、勉強はやればやるだけ身につく。自分はこれだけ頑張ったという感覚を持てるんです」
その一方で、サッカーの魅力にも取りつかれている。
「僕は、サッカーこそ論理的なものでは解決できないスポーツだと思っています。なんで点が入るのか、きちんと説明できる人はいない。ただ、そこが面白いと思っているんです。理不尽な世界で勝つ確率を上げる作業をするしかない。だから、面白いって」
勝つ確率を上げるためのカギ――。いまのところ思い浮かぶ答えは、「個人的な技術で言えば練習しかない。あと、いろいろなチームの戦術を見て、サッカー自体を知ることも大事じゃないですか。結局、できるプレーは限られているんです。人間がやっている以上、そんな突拍子もないプレーができるわけじゃない。だからプレーの幅を知って、選択肢が増えれば増えるほど良いんだと思います」
溢れんばかりの知性と、他の誰とも異なる独自の視点。林選手がサッカー選手として、あるいは一人の人間として、今後どのような歩みを見せるのか、楽しみで仕方がない。
抽選で5名様に林幸多郎選手 直筆サイン入りエネクルオリジナル浦和レッズコラボクリアファイルをプレゼント!
■応募方法
1.「レッズでんき」公式Xアカウントをフォロー
https://twitter.com/redsdenki
2.キャンペーン告知をリポスト
■応募締切
2026年9月23日(水)23:59まで