連載「素顔の選手《REDSげんき》」
植木颯(うえき はやて)37 MF
今回は、特別指定選手(※)を経て百年構想リーグから浦和レッズの一員となった植木颯選手にお話を伺いました。小学生の頃から努力を惜しまず、苦境のなかでも向上心を持ち続け、プロサッカー選手になるという夢を叶えた22歳が、これまでの歩みを語ってくれました。
大好きなサッカーを本格的に始めたのは、小学校1年生のとき。藤沢市立八松小学校に入学して、そのまま八松サッカークラブに加入した。週末と祝日、勝ち負けよりも個々の成長に重きを置く少年団で、友だちと一緒にボールを追いかけた。
試合ではチームの中心選手として脚光を浴びた。
「自分の学年でプレーするときと、上の学年に交じってプレーするときとでポジションが少し違っていました。上級生のチームで出るときは、右サイドでボールを持ってどんどん仕掛けるタイプの選手。同い年の子とやるときは、ピッチの真ん中で攻守両面に関与する、浦和レッズのいまに近い感じの選手でした」
足が速く、テクニックもあった。右サイドでパスを受けると、スピードを活かして縦へ勝負を挑んだり、得意の左足を駆使したカットインでゴールへ向かったり。誰もが認める突出したプレーヤーで、6年生になるとキャプテンを任された。
ただし、仲間を率いる力があったかというと、本人は少し首を傾げる。
「高校や大学でも主将をやりましたが、自分にその気質があるとは思わないです。高校や大学では早くから試合に絡んでいたので、それが任命理由だったんじゃないかなと。声で仲間を引っ張る感じではなく、プレーで示すタイプと言うか。リーダーシップがあって、みんなに推されてキャプテンになる流れとは、ちょっと違うような気がします」
小学6年生になる頃、藤沢市のトレセン選考会で見せたプレーがスカウトの目に留まり、横浜F・マリノスのスペシャルクラスに参加するようになる。少年団と並行して週1、2回、ジュニアユース昇格を目標とする選抜クラスでも自身を磨いた。
とはいえ、スカウトから声を掛けられるまでは少年団一筋。「強いチームがあるな」と感じてはいたが、Jリーグのアカデミーに目を向けることはなかった。Jリーグのクラブが多い神奈川県で育ったサッカー少年ながら、セレクションは一度も受けていない。
中学時代は横浜F・マリノスジュニアユース追浜に籍を置いた。そこでも前向きな姿勢を失わず、伸び伸びとサッカーを続けた。
「当然レベルは高かったですけど、やれる自信はありました。中学の最初の頃はサイドをやることが多く、ドリブルで何人も抜いたりすることで自信を掴むことができたんです。だから、レベルの高い環境でも楽しくサッカーをしていました」
中学2年生の頃からボランチでプレーする機会が増えて、攻守で存在感を放つ選手へと成長した。しかし、ユースへ昇格することはできなかった。中学3年生で突きつけられた現実……。それでも腐らず、自分を客観視して、前を向いた。
「一番は(横浜F・)マリノスのユースに昇格してプレーすることだったので、もちろん悔しさはありました。だけど、自分の実力を受け止めて頑張るしかないと思ったんです。ユースに上がれるかダメか保留のような状態が続いていたなかで、昇格を争っている選手と自分を比べて少し劣っているのは分かっていたので。もっとやらなきゃという気持ちがありましたし、見返すじゃないけど、自分はもっとできるんだぞっていうのを証明したい思いが、確かにありました」
「追浜の先輩もいた」日大藤沢高校は、桐光学園高や桐蔭学園高などと選手権出場を争う強豪校。そんなチームで1年の途中からレギュラーを勝ち取り、3年時には主将も務めた。全国大会とは縁が薄かったものの、「結果的に良かった」と振り返る。
日本大学サッカー部でも入学直後からボランチで出場機会を掴み、関東大学リーグ1部昇格などに貢献。試合に出続けるなかで多くを学び、4年時にキャプテンを務めたことで人間的にも大きく成長した。
「周りを見るようになりました。ピッチでは、どうすれば周りがプレーしやすくなるか。ピッチ外では、やるべきことをやっていない人に声を掛けるなど。自分自身はやっている自負があったので、その姿を見てみんなが行動してくれたらいいかなと」
そうした努力を実らせてプロへ辿り着くと、百年構想リーグでJリーグデビューを実現。8月に開幕した今季も、着実にプレータイムを伸ばしている。活躍の場所は、大学までと同じピッチの中央。中盤の底でチーム全体を見渡し、勝ちも負けも経験するなかで新たな感情が芽生えるようになった。
「ポジション的にも中心にいるので、チームを勝たせたい気持ちが、より強くなっていると感じます。試合を重ねるごとに責任感と自信が増しているので、そうしたポジティブなエネルギーをチームの結果に結びつけたいと、強く思うようになっています」
理想像も課題も見えている。例えば、統率力に関してはチームキャプテンを務める4人、西川周作、宮本優太、金子拓郎、渡邊凌磨はお手本だ。
「4人ともすごいリーダーシップがあり、練習から常にチームを引っ張っています。声を出す、盛り上げるといった自分にはない部分を強く感じます。非常に勉強になりますし、見習わないといけないところです」
プロ1年目のルーキーだが、志は高い。
「もっともっと仲間に信頼してもらって、影響力のある人間になりたい。影響力があれば自然と味方がついてきてくれるし、自分のやりたいこともやりやすくなると思うので」
「浦和に欠かせない選手」となる。植木選手は、そんな目標を達成するために、これまでと同様に自分を見失わず、努力を重ねている。
※所属チーム(大学又は高校等)に登録したまま、受入先のJクラブの選手としてJリーグ等の公式試合に出場可能となる制度
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