119 2026.10.7

REDS TOMORROW
「Red Wind」

バックナンバー
掲載 #406~#409

「REDS TOMORROW」は浦和レッズパートナーの朝日新聞社と浦和レッズが協同発行しているタブロイド紙です。
浦和レッズホームゲームの前日に朝日新聞朝刊に折り込まれます。

REDSDENKI

No.406

つかみ取った『飛翔へのカギ』

大住良之 サッカージャーナリスト

 こんなに気持ちのいい「負け方」はない。
 負けることなど誰も望まない。しかし8月7日の明治安田J1リーグ第1節、G大阪とのアウェーゲーム、3-4の敗戦は、間違いなく「次につながる」ものだった。
 「1人少ないにもかかわらず相手ゴールに向かう姿勢を失わなかった浦和レッズというチームの新しい一歩を、自分としてはっきりと認識できました」
 試合後、曺貴裁監督は胸を張ってそう語った。
 前半22分の退場劇。普通なら、壊滅的な敗戦を喫するか、ベタ引きに引いて小差での敗戦でよしとすべきところだ。
 ところがレッズは攻めた。攻めただけでなく、繰り返し決定的チャンスをつかんだ。何回シュートがポストを叩いて天を仰いだことか―。それでもレッズは攻め続け、前半のうちに逆転された試合を後半の連続ゴールで再逆転。最終的に敗戦に終わったものの、誰をも熱狂させ、逆に今季への期待を膨らませる試合となった。
 もう十数年近くも前、曺監督が湘南ベルマーレを率いていたころから、私は「このような人がレッズの監督になってくれたら…」と考えていた。クラブ規模の小さな湘南を率いて、曺監督はJ2から3回(!)もJ1に昇格させ、3回目の昇格では中位の成績を収めるようになっていた。
 湘南のバックボーンは妥協を許さない曺監督の姿勢だった。そして選手たちを人間として成長させ、チーム力に結びつけていた。毎年何人もの主力を抜かれながら、その都度、曺監督は与えられたチームでさらに戦えるチームをつくっていた。
 一方、レッズは有り余るタレントを抱えながら、きれいなサッカーに走ろうとしたり、何より、サポーターの期待に応えようと逆にプレーがぎくしゃくしてしまったりしていた。勝利だけを目指して迷わず戦い抜くチームをつくるには、曺監督のような「人間力」が必要と思ったのだ。
 その思いがようやくかなった。そして就任から日がないなか、最初の公式戦で、早くもレッズは見事に「曺カラー」を出して見せた。
 レッズがチャンスをつくるとき、G大阪のペナルティーエリアには4人、5人の選手が走り込み、ゴールを奪おうとしていた。恐れることなく、ただ前を向いて走り、戦い続けることこそ、レッズに必要な「飛翔へのカギ」のはずだ。初戦でそれを明確に示したレッズ。今季への期待は膨らむばかりだ。

No.407

野心に溢れる22歳。南野遥海は得点にこだわる

杉園昌之 スポーツライター

 セミの鳴き声とともにドスンという重たい音が響いた。全体練習が終わった直後だったが、目を向けると、ぎらぎらした眼光でゴールへ向かう選手がいた。
 ミドルレンジから叩き込まれた豪快な一発。鋭いコースに飛ぶシュートは、高い確率でゴールネットを揺らす。GKの手が少し触れた程度では、その軌道は変わらない。南野遥海の力を込めたキックは球速、威力ともに明らかに他とは違う。間近で目にする太いふくらはぎは、これまで打ち込んできた練習量を何よりも物語っている。
「感覚や足の当たりを大事にしているので、シュートは毎日、たくさん打ったほうがいいと思っています」
 ポジションはガンバ大阪時代のセンターフォワードとは異なり、主に前線のサイド。たとえ主戦場が変わろうとも、ゴールへの意識はブレない。自身に求められるのは「点を取ること」とはっきり口に出す。
「僕の役割は典型的なウイングのそれよりも、ストライカーに近いと思っています」
 開幕戦では執念がにじむ右足シュートで古巣から移籍後初ゴールを奪い、サンフレッチェ広島戦では相手のオウンゴールを誘発するFKで得点に絡んだ。シーズン序盤から存在感を示しているが、まだポテンシャルはすべて発揮できていない。連係面には改善の余地があるという。
「出し手のタイミングに合わせて動き出せば、もっとうまくプレーできると思います」
 ゴールに直結する“裏抜け”も持ち味の一つ。質の高いフリーランニングは、G大阪のアカデミー時代から培ってきたもの。ユース年代の頃にはラインの裏を取る名手として知られた大黒将志から指導を受け、トップチームではコーチを務める名パサーの遠藤保仁にアドバイスをもらっていた。受け手はもちろん、出し手の意見も大きな財産となった。
「良いタイミングで飛び出せていると言ってもらえたことが、自信になりました」
 2026年の明治安田J1百年構想リーグでは17試合に出場し、7ゴールをマーク。特筆すべきは、29.2%の高さを誇るシュート成功率だ。その決定力の高さは群を抜いていた。
 今季はさらに得点を量産していくつもりだ。スタメンであろうと、途中出場であろうと、ピッチに立つ気持ちに変わりはない。
「自分のやるべきことをやるだけです」
 野心にあふれる22歳の言葉には、ゴールへの強い執着と意欲がみなぎっていた。

No.408

3バックで鹿島に勝利。オプションからベースへ

国吉好弘 サッカージャーナリスト

 3連敗の後に3連勝。直近の鹿島アントラーズ戦では昨季の王者を相手にアウェーで激しい戦いを繰り広げ1-0で勝ち切った。
 この試合ではそれまでの4バックから3バックに変更してスタート。通常3バックはより守備的なシステムだが、曺貴裁監督が「あくまでも攻撃的に、引かずに最後まで(戦った)」と話したように、試合終盤こそ押し込まれたが、攻撃への姿勢を失わず戦い抜いた。「守りに入るのではなく、その後の攻撃、ボールを奪ったらどうするのかにフォーカスした」と攻撃のための守備という点を強調して臨んだ効果が見られた。
 戦い方を変えたことによって、戦術面ばかりでなくメンタル面も充実し、高い集中力を発揮して90分間相手にゴールを許さなかった。クリーンシートは今季初のことでもあった。3バックの中央を務めた宮本優太の統率力は素晴らしく、中盤でダブルボランチを組んだ瀬古樹と植木颯のコンビも機能し、瀬古が時間を作ってリズムを整え、植木は豊富な運動量でボールを奪い、攻撃を活性化した。
 鹿島戦を見る限り3バックの新しいシステムは機能したと言えるだろう。それまで4-3-3で戦い、要のアンカーを安居海渡と植木、瀬古が入れ替わりに務めたが、一人でゲームをコントロールする役割は、瀬古には適性がありそうだが、幅広く動くプレーが持ち味の安居と植木にはフィットしていない印象もあった。そこも踏まえて当面は3-4-2-1での戦いを浸透させていくことが重要ではないか。
 次節で対戦するファジアーノ岡山は3バックで臨んでくることが予想される。4バックの鹿島との対戦とは異なり、3バックを維持して挑めばミラーゲームとなり、1対1での争いがより重要になる。個々の能力では総合的にレッズが勝っており、それぞれ持てる力を発揮できるかが試される。システムがはまれば相手を圧倒することも可能だろう。
 岡山の木山隆之監督も鹿島戦のレッズを見て対策を練ってくるはずだが、3バックのチームを相手にどんな戦いができるのか見るためにも絶好の機会だ。ここでも好結果を出せるようなら、3バックがオプションではなくベースとなり得る。とりあえず岡山戦は新たな戦いをトライすべきだろう。新たな道筋が見えるかもしれない。

No.409

東京V戦をリーグ中断前8試合の最後を飾る試合に

大住良之 サッカージャーナリスト

 「きっちりと勝点3を狙って、ブレーク前の自分たちの序盤の8試合を飾るような試合にしたいと思います」
 後半アディショナルタイム11分という時間の失点で1-2の敗戦を喫したファジアーノ岡山戦後の記者会見、曺貴裁監督はこのような言葉で最初のコメントを締めくくった。
 6月16日に曺監督就任が発表され、7月3日にチーム始動、7月8日から26日の沖縄キャンプを経て2026/27シーズンのスタートを切ったレッズ。序盤はアグレッシブな内容を見せながらも3連敗と苦しんだが、第4節から3連勝を飾り、2週ぶりに埼スタに戻った岡山戦。しかし不動の守護神・西川をはじめコンディションが整わない選手が何人も欠場したこともあり、悔しい結果となった。
 だがあすの東京ヴェルディ戦を終えると、ことしからの「9・10月代表日程合併」により、次の明治安田J1リーグの試合は10月10日、アウェーのFC東京戦と、3週間の余裕ができる。もちろんその間にヤマザキビスケットルヴァンカップのカターレ富山戦(9月29日)と天皇杯のRB大宮アルディージャ戦(10月7日)があるが、曺監督としてはこれまでの戦いを整理し、10月からの戦いに向けて「曺カラー」を前面に押し出す絶好機だ。
 逆に言えば、これまでの7節は、開幕から1カ月半後にこの「中断期間」があるからこその戦いだったのかもしれない。30年間以上レッズを外から見ていた曺監督にとって、就任から3カ月、チーム始動から2カ月半、そしてリーグ開幕から1カ月半のこの期間は、「観察」の時期だったように思えるからだ。もちろん目の前の試合に勝つために全力を尽くす。しかしそこで起こったこと、選手たちの手応え、クラブの状況、そしてサポーターたちのリアクションなど、曺監督はすべてを「観察」し、この浦和レッズというクラブにふさわしいチームをどうつくり上げるか、考え続けていたはずだ。
 だからもちろん、10月からのレッズには大いに期待したい。しかし同時に、冒頭の「8試合を飾る試合」のコメントには、始動からの2カ月半、7試合を経て、曺監督がすでに大きな手応えをつかんでいることが表れている。
 「レッズは変わった。」―。誰よりもそう感じているのは、何十年も見続けてきたサポーターたちではないか。90分間献身的に戦い抜く「城福イズム」で染め上げられた東京Vとの対戦は、それを証明する絶好の機会だ。

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REDS TOMORROW「Red Wind」バックナンバー掲載 #397~400