No324 08.13発行
多士済々な新加入メンバーに期待
杉園昌之 スポーツライター
レッズは変革の夏を迎えている。主軸となるような即戦力を次から次に獲得した。リーグ終盤へ向けて、ピッチに立つ選手の組み合わせが、気になるところ。リカルド ロドリゲス監督のキャスティングには注目が集まる。スペイン人指揮官の起用法は「使う、使わない」の二者択一ではない。今のチームに不動のレギュラーは、ほとんどいないと言ってもいい。コアメンバーのなかで、うまくローテーションさせているのだ。
柏レイソルで10番を背負っていた江坂任を組み込んでも、同じポジションの小泉佳穂を塩漬けにすることはないだろう。むしろ、対戦相手やコンディションに応じて、個性の異なるトップ下を使い分けることも考えられる。得点能力の高い江坂がキャスパー ユンカーと組めば、警戒度の高い点取り屋をおとりにする形も出てくるかもしれない。今まで以上にゴールのバリエーションは増えそうだ。
東京五輪でオーバーエージとして活躍した右サイドバックの酒井宏樹、デンマーク代表経験を持つセンターバックのアレクサンダー ショルツが加わったメリットも計り知れない。前者とポジションが重なる西大伍、後者と同じ持ち場に入る岩波拓也、槙野智章はいずれもキャラクターが違う。多くの駒を自在に使いこなしてきた指揮官だからこそ、見ているほうは胸が膨らむ。手元に多士済々のタレントをそろえたことで、戦い方の幅は一気に広がった。
徳島時代のように3バックと4バックを併用することができれば、酒井を3バックの一角に置いたり、西をアウトサイドに上げることも可能になる。従来のシステムを変え、ポジションを動かすことで、同じ場所で競争していたはずの新戦力と既存選手の共存も見えてくる。江坂と小泉が同時にピッチに立ち、ユンカーとトライアングルを築いている絵はうっすらと想像できる。
変革者は土台づくりだけで1年目を終えるつもりはない。リーグ中断前に口にしていた言葉を思い出す。
「リーグ、ルヴァンカップ、天皇杯と3つの大会でまだ可能性を残している。すべてで全力を尽くす」
建前ではない。本気で頂点を狙っているのだ。相手を見て、臨機応変に姿形を変える"カメレオンスタイル"を突き詰めつつ、結果も追い求めている。野心家のチャレンジを、最後までしっかり見届けたい。