47 2022.08.12

REDS TOMORROW
「Red Wind」

バックナンバー
掲載 #333~#336

「REDS TOMORROW」は浦和レッズパートナーの朝日新聞社と浦和レッズが協同発行しているタブロイド紙です。
浦和レッズホームゲームの前日に朝日新聞朝刊に折り込まれます。

REDSDENKI

No333 03.18発行

リーグ戦6試合を終えて、浮かび上がった課題と期待

大住良之 サッカージャーナリスト

4月のAFCチャンピオンズリーググループステージ(タイで集中開催)に備えて第9節と第10節の2試合を前倒しした結果、浦和レッズは明治安田生命J1リーグの開幕から23日間でシーズンの6分の1に近い6試合を消化、1勝1分4敗と苦しんでいる。
3月13日のサガン鳥栖戦は、走行距離・スプリント回数ともリーグトップを誇る相手の暴風のような勢いにのみ込まれ、ペースをつかめないまま90分間を終了した感がある。そしてこの試合でも、「決定力不足」が浮き彫りになってしまった。苦しみながらも何回か決定的チャンスはつかんだのだが、それを決めきれないのだ。
開幕直前の「FUJIFILM SUPER CUP 2022」では江坂任が2得点して絶対王者の川崎フロンターレに2-0で快勝、「今季こそ優勝争いに加わるぞ」と期待されたが、Jリーグに入ると決定力不足を露呈し、リカルド ロドリゲス監督が目指すサッカーに昨年より近づいているように見える試合運びをしながらも「1点」「あと1点」を奪えずに勝点を失う形が続いている。
キャンプ中から、故障者だけでなく、新型コロナウイルスで離脱する選手が出て、シーズンの準備が十分にできたとは言えなかった。加えて、新戦力として期待されたダヴィド モーベルグの来日も遅れ、開幕前から補強のテーマとされていた「ストライカーの補強」も決まっていない。
二重苦、三重苦のなか、選手を入れ替えながらの試合内容は、スーパーカップを筆頭にけっして悪くはなかった。新戦力の馬渡和彰、岩尾憲、松崎快、大畑步夢らの活躍などもあり、リカルド監督の2年目の飛躍に期待がかかるのは当然だった。だがその試合内容が勝利に結びつかない。
しかしこの苦しみからの脱出を「救世主」に求めるのは間違っている。このご時世で戦争にたとえるのはやや気が引けるが、「大砲」がなければ、「機関銃」で戦う方法もある。1シーズンに20得点するストライカー1人より、「日替わりヒーロー」的に5得点の選手が10人いるほうが、チームとしては強いに決まっている。
ピッチに立つ選手が「チャンスには必ず決める」の覚悟をもち、リスクを背負ってでもゴール前に入っていく姿勢を見たい。やみくもに走るのではなく、適切なポジションを取るのが「ロドリゲス・サッカー」の神髄だろうが、その姿勢があれば、自然に走行距離(リーグ18チーム中15位)もスプリント回数(同13位)も増え、試合結果も順位も試合内容にふさわしいものになっていくに違いない。

No334 04.05発行

最終ラインでアピール中のDF犬飼智也

杉園昌之 スポーツライター

中途半端は性に合わないのだろう。今季、鹿島アントラーズから完全移籍で加入した犬飼智也は妥協を一切許さない。昨夏からどっぷりはまっている写真は、深い味わいを求めてフィルムを使う。オフの日に持ち歩く愛用のカメラは、1950年代のモデル。レンズ込みで70万円ほどで購入した。何においても凝り性なのだ。
ビルドアップへのこだわりも人一倍強い。パスを左右にさばくだけではなく、攻撃の第一歩となる縦パスを恐れずにポンポンと入れていく。簡単にGKへのバックパスを選ぶことはほとんどない。相手のプレスが来ても、ボールを持ってひらりとかわし、前にパスをつける。3月19日のジュビロ磐田戦では開幕戦以来の先発出場を果たし、存在をアピールしていた。CKからは持ち味である空中戦の強さを生かし、移籍後初得点もマーク。本人も手応えは感じている。
「相手が来ても無理に蹴ることなく、ビルドアップからチャンスをつくれていたと思います」
シーズンの序盤は後半終盤に守備固め要員として投入されることが多かったため、見えにくかった部分。先発に名を連ねたからこそ、リスクを恐れないプレーが光った。出足の速いインターセプトもそのひとつ。相手FWの前に体をすっと入れてパスをカットし、そのまま持ち上がり、攻撃につなげていた。新しい可能性を示した“第3のセンターバック”が、チームの成長を一段と加速させるかもしれない。
リカルド ロドリゲス監督が率いる新生レッズにポジションを約束されている選手はいない。昨季から最終ラインの中央でコンビを組んでいたアレクサンダー ショルツと岩波拓也も決して不動ではないだろう。
いばらの道を突き進んできた28歳は、どん欲である。4月6日に顔を合わせる清水エスパルスでプロのキャリアをスタートさせたが、2年目の途中から3年目にかけては当時J2の松本山雅で鍛えられた。2018年から4シーズン在籍した鹿島でも苦労を重ねてポジションをつかみ、成長してきた。
安住を選ばず、新たにタイトルを取るために来たというレッズでは、また一回り大きくなる予感が漂う。4月15日からは、AFCチャンピオンズリーグの過酷なグループステージが始まる。中2日の6連戦。勝負の4月は、“こだわりの男”が重要な役割を果たすかもしれない。きっと中途半端な仕事はしないはずだ。

No335 05.12発行

攻撃陣は充実したが決定力の課題は残っている

国吉好弘 サッカージャーナリスト

AFCチャンピオンズリーグ2022(ACL)のグループステージを戦った浦和レッズは、4勝1分1敗の2位で終え、ノックアウトステージへ進んだ。蒸し暑いタイでハードスケジュールをこなす中でも、試合ごとに選手を入れ替えて臨み、シンガポールのライオン・シティ・セーラーズ、中国の山東泰山にはすべて大差で勝った。
だが、首位の座を譲った韓国の大邱FCとは1分1敗。得点も奪うことができなかった。優勢に進めながら相手の激しいディフェンスに手こずり、特に第2戦では多くのチャンスを決めきれない課題は残った。とはいえ、新加入のダヴィド モーベルグ、アレックス シャルクも持ち味を発揮するなど、今後につながる面も多く見られた。
帰国後の初戦となった8日の柏レイソル戦は、ACLの5戦目、セーラーズに6-0で大勝した試合のメンバーを、トップ下の小泉佳穂を江坂任に代えた他はそのまま起用。ゴールを目指す狙いが感じられたが、結果は0-0の引き分け。皮肉にも大邱との第2戦のようにチャンスは作れたが、ゴールには至らず、リカルド ロドリゲス監督も「決定的な場面を決めきることが課題」とACLと同じことを繰り返すしかなかった。
このメンバーで臨んだのはタイでの連戦で酒井宏樹、大畑歩夢、キャスパー ユンカーの3人が負傷離脱したことも理由だった。中でもユンカーの欠場は決定力という点で、現状もっとも期待できる選手がいなかったことは響いた。
以前から中央に構えるタイプのストライカーの必要性が叫ばれ、新しい外国人選手の獲得も噂されるが、ユンカーが戻った後は彼の決定力を生かすやり方を考えたほうが得策だろう。ユンカーはターゲットマンタイプではないが、得点感覚の鋭さは並外れたものがある。そういう選手はどんな状況でも得点できるものだ。
ACLや柏戦を見てもシャルクもセンターフォワードというより左から切れ込んでの右足シュートに威力がある。モーベルグの右サイドでのプレーはすでにその破壊力が相手チームの脅威となっており、モーベルグ、ユンカー、シャルクの3人を並べたプレーを見てみたい。3人はコミュニケーションの問題もないだけに、そろえば予想を上回る相乗効果も期待できる。
ここからの7連戦で、いつトリオがそろうかは分からないが、ACLで多くの選手をプレーさせたことで松尾佑介や松崎快もよりチームに馴染み、彼らにすれば「外国人トリオ」がそろう前により存在感を高めたいところ。攻撃陣のポジション争いに目が離せない。

No336 05.17発行

リーグ戦巻き返しのキーマンは誰?

飯尾篤史 スポーツライター

4月中旬から下旬にかけて行われたAFCチャンピオンズリーグ(ACL)のグループステージで、浦和レッズは帯同した27選手全員をピッチに送り出した。
4月の試合中に受傷した犬飼智也にはじまり、キャスパー ユンカー、酒井宏樹、大畑歩夢が負傷離脱を強いられたのは残念だが、大きく戦力が落ちないのが今季のレッズの強みだろう。犬飼は岩波拓也、ユンカーはアレックス シャルク、酒井は馬渡和彰、大畑は明本考浩がその穴をしっかり埋めている。
昨季は絶対的な存在だった小泉佳穂や関根貴大さえベンチスタートが少なくないほど、各ポジションの争いは熾烈だが、なかでも最も層が厚いのがボランチだろう。
昨季の主力だった柴戸海、平野佑一、伊藤敦樹が健在なうえ、今季はリカルド ロドリゲス監督の徳島時代の教え子であるプレーメーカーの岩尾憲と、大学ナンバーワンボランチとの呼び声が高かった安居海渡が加入した。
序列がおぼろげながら見えてきた他のポジションと比べ、ボランチに関してはそれが見えないほど争いが拮抗している。
その群雄割拠のエリアにおいてキーマンとなりそうなのが平野だ。昨季8月に水戸から加入すると瞬く間にポジションを掴み、攻撃のビルドアップのタクトを振るったのは記憶に新しい。
今季は岩尾の加入によって出番を失い、初スタメンとなった3月6日の湘南戦で負傷交代を余儀なくされる不運があったが、ACL4戦目の大邱戦で復帰を果たすと、その後公式戦2試合で先発し、復調した姿を見せている。
同じく攻撃を組み立てるボランチであっても、岩尾がボールを散らしながらリズムを作るタイプなら、平野はより縦への意識が高く、攻撃のスイッチを入れられるタイプ。なかなか勝ち切れない今のレッズにとって、平野の強気のパスがチームの推進力を加速させるに違いない。
最終ラインから攻撃を組み立ててボールを保持し、主導権を握るレッズのサッカーにおいて、ボランチは戦術上の肝と言えるポジション。昨季も、平野と柴戸のコンビで固定されるようになったシーズン半ば以降、チームのパフォーマンスは安定した。
ダヴィド モーベルグやシャルクといった新加入のアタッカーを縦パス1本で活かせる平野こそ、リーグ戦で巻き返すためのキーマンとなるに違いない。

Prev

REDS TOMORROW「Red Wind」バックナンバー掲載 #322~#323