49 2022.09.08

REDS TOMORROW
「Red Wind」

バックナンバー
掲載 #337~#339

「REDS TOMORROW」は浦和レッズパートナーの朝日新聞社と浦和レッズが協同発行しているタブロイド紙です。
浦和レッズホームゲームの前日に朝日新聞朝刊に折り込まれます。

REDSDENKI

No337 06.17発行

あのワクワク感を、もう一度

杉園昌之 スポーツライター

明治安田生命J1リーグでの勝利は、3月19日のジュビロ磐田戦までさかのぼる。ちょうど3カ月前の埼玉スタジアムは、ゴールショーに沸いていた。スコアラーには、北欧トリオがそろい踏み。エースのキャスパー ユンカーを筆頭に、守備の要であるアレクサンダー ショルツ、そして加入したばかりのダヴィド モーベルグの名前も並んだ。後半から登場した新顔のスウェーデン人は、カットインから得意の左足で初ゴールをマーク。翌節もゴールネットを揺らすなど、背番号10の得点力に目を丸くした人は多いだろう。局面を打開するだけのドリブラーではない。
ただ、AFCチャンピオンリーグのグループステージ後は少し元気がなく、中断前のリーグ戦は3試合欠場。天皇杯2回戦で先発にようやく復帰した。後半からはサイドに張ると、持ち前のドリブルからゴールに迫る動きを披露。やはり、大きな可能性を感じずにはいられない。
2020-21シーズンはチェコの名門スパルタ・プラハで26試合に出場し、キャリアハイの10ゴール6アシストを記録している。得点パターンも多彩。いまレッズで見せている右から切り込む形だけではない。直接FKも決めれば、相手最終ラインの裏へ抜け出す形もある。さらにミドルシュートまで沈めていた。まだ浦和で発揮していない能力があるようだ。
中断期間中には、周囲とのコンビネーションをより深めたはず。江坂任とのワンツーで崩し、小泉佳穂や平野佑一からのスルーパスで抜け出す形も有効。オーバーラップしてくる宮本優太をおとりに使ってドリブルで切れ込む形など、想像は膨らむばかり。
後半戦から巻き返しを誓うレッズにとって、喉から手が出るほど欲しいものは明白。リーグ戦16試合で15得点では寂しい。リカルド ロドリゲス監督には、手持ちの大駒の能力を最大限に引き出してもらいたい。
リーグ戦では9試合勝ちなし。J1通算450勝目もお預けにしている。苦しいチーム状況のなかでもモーベルグは、平常心を保つことを心掛ける。
「たとえ、サッカーでうまくいかないときでも、メディアなどの周囲の環境に流されないこと。どんなときも自分をしっかりコントロールすることが重要です」
英国、デンマーク、チェコと渡り歩いてきた28歳の信念は揺らがない。名古屋グランパス戦では、再びゴールショーの得点者に名を連ねることを期待したい。

No338 07.05発行

「7月攻勢」へ! 臨戦態勢は整っている

大住良之 サッカージャーナリスト

「風」が変わり始めている。攻め続けているのに得点を奪えず、苦しみが続いた5月まで。しかし日本代表日程をはさんで再開されたJリーグでは、名古屋に3-0、神戸に1-0と無失点で連勝。梅雨も明け、猛暑のなか、今季の浮沈をかけた「7月シリーズ」が始まった。
4月、5月の2カ月間、8分け1敗と、レッズはJリーグでまったく勝てなかった。内容自体は悪くない試合が多かったのに、「ここ」というときに得点を決められず、勝利が遠かった。
しかしリカルド ロドリゲス監督は信念を貫いた。昨年来積み上げてきた「パスで支配するサッカー」を崩さず、より多くのチャンスをつくることによって得点を増やそうという、ごくまっとうなトレーニングを、中断期にも積み重ねてきた。そして今季にはいって初めてまとまった練習の機会が得られたなか、これまで長い時間を割くことができなかったテーマにも取り組んだことは、再開後の2試合で明らかだ。セットプレーである。
名古屋戦では岩尾憲の左CKから連続得点が生まれた。神戸戦を勝利に導いたのは、90分にダヴィド モーベルグが決めた直接FKだった。「苦しみの2カ月間」では、3回のPK以外にセットプレーからの得点がなかったのに、わずか2試合で3点が生まれたのは偶然ではないはずだ。
先週末のG大阪戦に続き、7月にはあすの京都戦、今週日曜のFC東京戦、そして16日の清水戦と続く。もう引き分けはいらない。ここで勝ち点を積み重ね、一挙に上位に肉薄したい。そしてE-1選手権(7月19日~27日)をはさみ、7月30日には川崎Fとのホームゲームが待ち構える。
酒井宏樹も復帰した。点取り屋ブライアン リンセンの加入も決まった。いまのレッズは、パスを回し、試合を支配する力で、どこも恐れる必要はない。そこに決定力が加われば、「7月攻勢」は十分に現実味がある。
8月後半には、レッズにとっていまや今季最大のターゲットとなったAFCチャンピオンズリーグ(ACL)の「さいたまラウンド」が開催される。東アジアの強豪8クラブが集まるなか、「主役」は、当然レッズでなければならない。「7月攻勢」が成功すれば、ACLの戦いにも勢いがつく。決定力を高め、セットプレーもさらに磨いて、レッズの夏がさらにヒートアップする。

No339 07.29発行

リーグ戦上位浮上の匂いを感じさせてきたレッズ

国吉好弘 サッカージャーナリスト

リーグ戦では中断明けの6試合で4勝2分と無敗、第21節でFC東京を3-0、第22節ではアウェーで清水エスパルスを2-1と下して連勝し、好調だ。特にこの2試合ではボールを動かして空いたスペースを使う、リカルド ロドリゲス監督が本来目指していたサッカーが展開できている。その要因はいくつかあるが、攻守の要となる中盤の中央、いわゆるボランチとして岩尾憲、伊藤敦樹が定着したことが大きい。
序盤戦ではまだチームに馴染み切れない部分が見受けられた岩尾だが、リカルド監督自身も認めるようにその戦術をよく理解しており、最近では攻守の切り替えを含むゲームコントロールの部分で安定感が際立ってきた。
そして伊藤の成長が素晴らしい。ダイナミックな動きで幅広く顔を出し、ボールを奪うとともに攻撃に絡む。清水戦の決勝ゴールなど酒井宏樹からボールを受けて関根貴大とのワンツーで局面を崩し、フリーの江坂任に渡して相手オウンゴールにつなげたプレーは秀逸だった。FC東京戦では効果的なミドルシュートを決めて勝利を引き寄せるなど不可欠な存在になりつつある。全盛時の稲本潤一を彷彿させる(ルックスもちょっと似ている)プレーはスケールの大きさを感じさせる。静の岩尾と動の伊藤のコンビは現在のJ1でも屈指の存在と言っていい。
ここが安定したことで、ダヴィド モーベルグ、小泉佳穂、江坂、関根、大久保智明、そしてここ数試合はトップで存在感を示す松尾佑介も含め、豊富な人材を揃える2列目が生きてくる。誰をいつ使うかはリカルド監督も頭を痛めるところで、トップにキャスパー ユンカーが復帰し、パリ・サン=ジェルマン(パリSG)戦でデビューしながら負傷してしまったブライアン リンセンも加われば、新たなオプションも加わっていく。それだけに指揮官の采配が今後の浮沈のカギを握る。
第23節では3連覇を目指す川崎フロンターレと対戦する。ボールを握りたいチームとしてJを代表する相手に、同じ方向性を目指すレッズがどれだけ対抗できるか。好調を続けられるか否かを占う意味でも重要な試合となる。パリSG戦を欠場したアレクサンダー ショルツのコンディションが気になるが、攻撃面ではここ数試合のように松尾の1トップが有力だろう。勝ち切ることができればJ1での上位浮上も見えてくる。

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