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REDS TOMORROW
「Red Wind」

バックナンバー
掲載 #346~#348

「REDS TOMORROW」は浦和レッズパートナーの朝日新聞社と浦和レッズが協同発行しているタブロイド紙です。
浦和レッズホームゲームの前日に朝日新聞朝刊に折り込まれます。

REDSDENKI

No346 03.03 発行

「原点回帰」の地で成長の一歩を刻め

大住良之 サッカージャーナリスト

原点回帰である。
浦和駒場スタジアムこそレッズの原点であることに異論をはさむ人はいないだろう。駒場があったから、いまから30年以上前の1992年、浦和という町にレッズが誕生した。
いま見ると質素な陸上競技場だが、当時の駒場はメインスタンド以外は小さなスタンドしかない、8800人収容の、本当に小さなスタジアムだった。だがその存在が「レッズ」を生んだ。当時の浦和市は、Jリーグに備えて全座席の1万人規模に改修し、わずか2年後にはバックスタンドを二層式にする大工事を敢行して2万人規模にと、短期間に費用をつぎ込んだ。
エネルギー源は、間違いなくサポーターだった。それまでの日本には、政治的なデモ以外に、自主的に集まった人びとが一体となって活動することなどなかった。「自分たちのチームだからいっしょに戦いたい」と、心を合わせて歌ったり旗を振ったりするサポーターの活動は、日本の「大衆社会史」に記録されるべき大事件だった。
「駒場」はそのシンボルだった。そのサポーターの熱気のなかでレッズは育まれ、日本を、そしてアジアを代表するクラブになった。
駒場でのシーズン開幕は2003年以来実に20年ぶり。偶然のことではあるが、現在のレッズにはふさわしい舞台であるような気もする。
マチェイ スコルジャ監督を迎えてシーズン3試合目。選手たちは新監督が考えるサッカーを表現しようと必死に戦っているが、まだ適切なバランスを見いだせずに苦しんでいる。駒場時代のレッズも、苦しみの連続だった。J2降格も味わった。しかしそこでチームとサポーター、そしてレッズを取り巻くすべての人が団結を崩さなかったからこそ、その後の飛躍が生まれた。初のタイトルであるナビスコカップを獲得したのはこの2003年だったし、翌年、Jリーグの第2ステージ優勝を決めたのも、この駒場だった。苦しみの時代を経て、Jリーグを代表するチームにまで成長しきってから、レッズは舞台を本格的に埼スタに移したのだ。
3月に駒場で3試合が行われるのは、「原点から成長の歴史をたどれ」という、レッズに対するサッカーの神様の「啓示」のような気がする。苦しみながらも心を合わせて戦い、成長し、自らを見いだして確たる「自信」につなげる―。この駒場が、そしてそこに響くサポーターの歌声が、その重要な触媒になるはずだ。

No347 03.17 発行

心身ともに成長したDF荻原拓也。古巣からの得点に期待が高まる

杉園昌之 スポーツライター

浦和駒場スタジアムに迎える特別な相手のことを頭に浮かべると、自然と笑みがこぼれる。
「僕、新潟はめっちゃ好きなんです」
2年半前、ジュニアユースから過ごしてきた浦和レッズを初めて離れ、期限付き移籍でプレーしたのが当時J2のアルビレックス新潟。荻原拓也にとっては、プロとして飛躍するきっかけをつかんだクラブである。
トップ昇格後、出場機会をつかめずに苦しんでいたが、2020年の途中から加入し、J2で24試合に出場。その活躍が認められて、21年からは再び期限付きで京都サンガF.C.へ。新潟とのJ2での対戦成績は、はっきりと覚えている。「1勝1分。京都時代は負けていないんです」。今季は最も愛着ある浦和のユニホームを着て、J1の舞台で戦う新潟戦。生え抜きのモチベーションが高まらないわけがない。
「古巣を倒すのは、気持ちがいいんで。絶対に勝ちますよ」
言葉には自信がにじむ。リーグ開幕から2試合はチャンスに恵まれなかったが、ホーム初戦のセレッソ大阪戦からはYBCルヴァンカップを含めて3試合連続出場。ゲームを重ねるたびにパフォーマンスは向上しており、攻守両面でパワーをみなぎらせている。縦への推進力、力強いボール奪取は目を見張るばかり。ただ、新潟、京都で過ごした2年半で磨いてきた能力は、まだすべて出し切れていないという。
「いまは60%程度。これからコンディションが上がっていけば、攻守ともにもっと強度を出せます。ゴールに直結するプレーを見せたいし、積極的にボールを取りに行きたい。奪った瞬間に出力を上げ、前へ出て行くときに会場も盛り上がると思うので」
荻原の強みは、爆発的なスプリント。新潟ではアルベル監督(現FC東京)、京都では曺貴裁監督のもとで、チーム戦術の中で個の力を最大限に発揮する術を覚えた。浦和のマチェイ スコルジャ新体制では試行錯誤を繰り返しているが、焦ってはいない。かつては高ぶる気持ちをコントロールできずにピッチで空回りすることもあったものの、いまは違う。
「90分間、走りまくって、戦い続けたいですが、気負わないようにしています。最高のメンタル状態で臨みたい」
心身ともに成長した23歳は落ち着いた表情で自らに言い聞かせながらも、胸を躍らせているようだった。次はただの古巣ではない。京都時代にJリーグ初ゴールを挙げているチームでもある。浦和での記念すべきJ1初得点も期待したい。

No348 04.14 発行

堅守を支えバランスを整えるキーマンは岩尾

国吉好弘 サッカージャーナリスト

4連勝していた浦和レッズは、前節の名古屋グランパスとの一戦でそれぞれの特徴を出しながらお互いの厳しい守備で0‐0と引き分け、3位から6位に落ちたものの首位ヴィッセル神戸と勝点3ポイント差で優勝争いの一団を維持している。
ここ5試合で4勝1分と安定した戦いができているのは、わずか2失点、無失点試合が3と守備が安定していることが大きい。アレクサンダー ショルツとマリウス ホイブラーテンのセンターバック(CB)コンビが堅陣を築いていることは多く語られており、後ろ盾のGK西川周作の好守がそれを支えていることも間違いない。
さらに忘れてはならないのが、3人の前で的確かつ効果的なプレーを見せている岩尾憲の存在だ。名古屋戦でも相手の攻撃を読んでインターセプトし、ボールが入った相手に激しく寄せて奪い、CBの2人の間に入ってボールを受けて相手のプレスをかわすつなぎの中心となっていた。前線で体を張って奪い、チャンスにつなげたシーンもあった。要所、要所で的確な判断によるプレーができており、守備ばかりでなく攻撃の要にもなっている。
開幕当初はまだマチェイ スコルジャ新監督の戦術に戸惑っているような場面も見られ、それが成績にも直結していたと言っては安直すぎるかもしれないが、3戦目あたりからボランチでコンビを組む伊藤敦樹との連携、ポジショニングが整理されて、チーム全体のプレー、ボールの動きにも反映されたように見える。
第5節のアルビレックス新潟戦の後には、「いわゆる4-4-2のフラットなラインでプレスに行くのか、敦樹を少し前に置いてダイヤモンドのようにしてハメにいくのか、そこのやり方を縦にするか横にするかで、コンパクトにできて良い奪い方ができたシーンもあったと思います」と本人が語っている。
「敦樹が攻撃に絡んでいく特長を生かす一方で、そこから生まれるリスクも当然あるので、その裏側の部分をやってほしいと監督からも言われています」とも語り、スコルジャ監督の要求に応え全体のバランスを取ることがスムーズになった。
スコルジャ監督はACLの決勝までメンバーは固定したいと話し、特にボランチについては岩尾と伊藤が盤石とも示唆している。あす4月15日、今季初めての埼玉スタジアムに迎える相手はミハイロ ペトロヴィッチ監督率いる北海道コンサドーレ札幌で、かつての指揮官に新たなスタイルのレッズを見せつけたいところ。そのキーマンは岩尾だろう。

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