連載「素顔の選手《REDSげんき》」
Episode5 ぼくの誕生日
前田 直輝(まえだ なおき) 38 FW
小学生の頃、誕生日の楽しみの一つは、おいしいレストランに連れて行ってもらうことでした。地元の東浦和にあるレストランでは、コース料理が楽しめて、焼き立てのパンが食べ放題です。そこで、前菜、スープ、メインと順番に食べながら、ナイフやフォークの使い方を学びました。
店内にはピアノがあり、バースデーソングを演奏してくれました。誕生日プレートを用意してもらったことや、6歳上の兄と競い合ってパンをたくさん食べたことが印象に残っています。
誕生日は家で食事するというよりは外食することが多かったと思います。でも、兄が中学や高校に進学して部活で忙しくなり、家に帰るのが遅くなると、特別な日には家ですき焼きを食べていた記憶があります。
誕生日のケーキには我が家ならではの楽しみがありました。ホールケーキが出されたら、最初に誕生日の人が好きなところから食べていいというお約束です。母に当時の話を聞くと、兄はイチゴだけ、3歳上の姉はスポンジだけ、僕は生クリームだけを食べていたそうです。その話を聞いて、人それぞれ個性が出て面白いなと思いました。
今、僕には7歳の息子ともうすぐ3歳になる娘がいます。息子が小学校に入るまでは、僕が幼い頃と同じようにホールケーキをそのまま出して、子どもたちの好みを観察していました。娘はクリームが好きで、スプーンできれいに食べていたので、僕が子どもの頃と同じです(笑)。
大人が食べるときにはケーキはぐちゃぐちゃになっていて、スポンジだけしか残っていません。でも、娘がおいしそうに食べる様子を見ていると、ほほえましい気持ちになります。今は息子が小学校2年生になったので、最初にケーキを切り分けてみんなで食べるようになりました。
誕生日プレゼントにはサッカーグッズではなく、ゲームを買ってもらっていました。友達がゲームを持っているのを見て、いつも羨ましく思っていたからです。父がサッカーに厳しく、遊ぶ時間が限られていたので、自然とゲームで遊びたいという気持ちが強くなっていたのでしょう。
小学校3、4年生の頃から東京ヴェルディの育成組織に入り、浦和から練習場まで電車で通っていました。移動中には宿題をして時間を過ごし、よくゲームボーイで遊んでいたことを今でも覚えています。
育成時代には、いたずらもよくしました。誕生日の選手に遅い集合時間を伝え、遅れてきた選手の後ろから水や生卵、小麦粉をかけて驚かせることもありました。みんな誕生日になると警戒していたのは、何かやられるんじゃないかと恐れていたからかもしれません。僕があまりいたずらをされなかったのは、面倒なことになると思われていたからでしょうね(笑)。
家族は毎年、ユニフォームの形をした手作りのお守りをプレゼントしてくれます。やはり家族からお守りや手紙をもらうと、とてもうれしい気持ちになります。僕も家族の誕生日には、いつも手紙を渡しています。
妻への誕生日プレゼントは、欲しいものを直接聞くのではなく、自分があげたいものを選んでいます。「今、何が欲しいのかな?」と考える時間が大切だと思っているからです。「こんなこと言っていたな」「あれが欲しいのかな」と、妻のことを思いながら考える時間は、とても楽しいです。
僕は今年の11月17日で30歳になります。20代最後の年も残り数カ月です。サッカー選手としてのキャリアが後半に差し掛かっていることも自覚しています。誕生日を迎えることに対して危機感もありますし、残り数カ月をどう過ごすか、いつも考えています。
とはいえ、30歳になっても劇的な変化はないと思います。家族の存在が僕のサッカー人生において大きな支えであることに変わりはありません。
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