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REDS TOMORROW
「Red Wind」

バックナンバー
掲載 #369~#372

「REDS TOMORROW」は浦和レッズパートナーの朝日新聞社と浦和レッズが協同発行しているタブロイド紙です。
浦和レッズホームゲームの前日に朝日新聞朝刊に折り込まれます。

REDSDENKI

No.369 05.25発行

今季を占う5連戦。カギは中島翔哉の爆発力

大住良之 サッカージャーナリスト

少し時間がかかったが、ようやくエンジンがかかってきたレッズ。
今季これまでの15試合を5試合ずつに区切ってみれば、その「第3クール」は3勝1分1敗、初めて勝点が10となり、得点も11。
1試合平均勝点2、平均得点2以上は、いずれも優勝争いが可能な数字だ。ただひとつ失点が多い(7点=平均1.4点)のは改善を要するが…。
しかしあすのFC町田ゼルビア戦からスタートする「第4クール」は、相手5チーム中4つが現在のレッズより上位の好調チーム。
ただひとつ6位のレッズより下位(7位)のセレッソ大阪も、一時は首位にいた。6月に日本代表の国際Aマッチ日程がはさまるものの、今季を占う最難関のシリーズだ。
ここを「第3クール」以上の成績で乗り切れば、後半戦の優勝争いが見えてくる。そのカギを握るのは、ずばり中島翔哉の“爆発力”だ。
昨年半ばにレッズに加入した中島は、なかなかトップフォームにもっていけなかったが、今季は初めて先発で起用された第9節のガンバ大阪戦からどんどん調子を上げ、攻撃の牽引役となっている。
「第3クール」の好調は、それまで各ポジションにこだわり過ぎだった前線の選手たちが、左ウイングのポジションから自在にポジションを取る中島の動きに触発されて流動的に動くようになったことが大きい。
だが中島は単なるドリブラーでもパサーでもない。彼は非常に優れたシュート力をもつ選手であり、得点力が復活して初めて本来もつ高いポテンシャルが発揮されることになる。
交代出場4試合だけだった「第1クール」では、中島のシュートは1本だけだった。それが「第2クール」では9本に増え、「第3クール」では13本となった。
残念ながらまだ無得点だが、その内容も、次第に鋭さが増し、ゴールに近づいているように思える。
中島と言えば「左45度」である。左サイドから持ち込み、ペナルティーエリアの角あたりから放つ美しい軌道のシュートがそろそろ決まりそうな予感が、私にはある。
そのシュートが決まり始めれば、相手があわてて対応することでチアゴ サンタナを筆頭に他の攻撃陣の得点力もぐんと上がるに違いない。
今季前半の最難関「第4クール」。
町田、ヴィッセル神戸、C大阪、鹿島アントラーズ、名古屋グランパスとの5連戦で、中島の得点力が“爆発”し、レッズが優勝争いに肉薄するのを、私はとても楽しみにしている。

No 370 05.31発行

右サイドバックで頭角を現してきた石原広教

飯尾篤史 スポーツライター

プレシーズンの沖縄トレーニングキャンプで「サイドバックとウイングバックはポジショニングが全然違うから、戸惑いがある」と苦しんでいたのが嘘のようだ。
今季、浦和レッズに加入した石原広教は、これまでのプロキャリアで5バックのウイングバックの経験しかなかったが、今では4バックのサイドバックでのプレーもすっかり板についてきた。
タイミング良く駆け上がってクロスを蹴り込むだけでなく、的確なポジショニングで攻撃の組み立てにも貢献。"ビルドアップの出口"にもなり、ボール循環にひと役買っている。
「守備は(人数が多いぶん)5バックのほうが守りやすいんですけど、攻撃は4バックのほうが楽しいですね」
攻撃面における石原の進化が如実に表れたのが、5月26日の明治安田J1リーグ第16節FC町田ゼルビア戦のゴールシーンだ。対峙する相手を内側へのドリブルではがすと、縦パスを入れてそのままゴール前まで走り込む。そして、安居海渡からのヘディングパスを自身も頭でつなぎ、伊藤敦樹のゴールを導いた。
「自分が良い形ではがしたあとに勢いをもって入っていけば、相手も嫌だと思うので。今日はそこを意識して試合に臨みました」
ボールを相手にさらしながらピッチ中央へと持ち運んでいくプレーは、キャンプ中から取り組んできた形。モルテン カルヴェネス コーチとマリオ エドゥアルド チャヴェス コーチ兼分析担当から指導され、武器になるように磨いてきた。
「相手ベンチから『アイツのドリブルは取れるぞ』っていう声も聞こえてくる(苦笑)。逆にそれで『はがしてやろう』と思うし、内側にも外側にも行けるので、取られそうな感じもしない。今日のプレーは自信になるし、その質をもっと上げていきたい」
石原がポジションを掴んだきっかけは、日本代表での経験も豊富なキャプテンの酒井宏樹の負傷欠場だった。その酒井も5月22日のYBCルヴァンカップのV・ファーレン長崎戦でスタメン復帰し、右サイドバックのレギュラー争いもいよいよ本格化する。
だが、自信を掴みつつある石原に、気負いはない。
「数字のところと、チームの勝利という結果にこだわって、自分がやるべきことをやり続ければ、チャンスはあると思います」
渡邊凌磨と大畑歩夢が争う左サイドバック同様、タイプの異なるふたりが争う右サイドバックも、浦和レッズの大きな強みになりつつある。

No371 06.21発行

ピッチ内での信頼感を増している中島翔哉

杉園昌之 スポーツライター

背番号10がピッチにいると、いないではレッズの攻撃が大きく変わってしまう。
加入2年目を迎えている中島翔哉は、いまや余人を持って代え難い存在になりつつある。
シーズン序盤こそベンチスタートが多かったものの、4月20日の明治安田J1リーグ第9節ガンバ大阪戦以降はスタメンに定着。6月1日の第17節ヴィッセル神戸戦ではケガ明けで後半からの出場になったが、あらためて存在の大きさを知らしめた。
左ウイングで起点をつくり、ゲームの流れを引き寄せると、値千金の同点弾となるシーズン初ゴールもマーク。ベテランの岩尾憲は、自由に動き回るチャンスメーカーに厚い信頼を寄せている。
「苦しい状況のなかでも一人で流れを持って来ることができる貴重な存在。チームのなかでも何かを起こす期待感は大きい」
中島自身は「空いているところに動いているだけ」と話すものの、パスの出し手側はボールを預けたいタイミングで顔を出してくれるという。そのポジショニングの妙には、岩尾も舌を巻く。
「すっと1m、2m動いてくれるんです」
中島はウイングの固定観念にとらわれることはない。斜め下の中央エリアに移動してボールを受けることもあれば、右サイドまで動くこともある。左サイドバックの渡邊凌磨は「翔哉くんが攻撃のときに、どこに行っても問題はないです」とさらりと話す。
むしろ、オーバーラップのタメをつくってもらうなど恩恵を受けており、「良い関係性を築けています」ときっぱり。インサイドハーフに入る大久保智明も、10番の動きに呼応するメリットを感じている。ポジションをローテーションさせることで左サイドの攻撃が活性化し、チームのリズムも良くなるという。
「良い循環が生まれるんです」
6月15日の第18節セレッソ大阪戦は、残念ながら万全の状態が整わずに欠場。せめてジョーカーとして起用できていれば、結果はまた違ったのかもしれない。
日本代表に名を連ねていた20代半ばの中島はドリブラーのイメージが強かったが、いまはひと味違う。円熟味が増した29歳。卓越したボールテクニックで攻撃にアクセントをつけ、周りを生かして自分も生きる。
赤いユニフォームを着て、新たな飛躍を遂げようとしている。
まずはあすの第19節鹿島アントラーズ戦のピッチに立ち、4戦勝ちなしの嫌な流れを断ち切ってくれるはずだ。

No372 06.29発行

システム変更で追いついた鹿島戦を後半戦の活路としたい

国吉好弘 サッカージャーナリスト

明治安田J1リーグの折り返し地点を迎えて7勝5分7敗と五分の星で11位。残念ながら上位と差がついている。
ペア マティアス ヘグモ監督が推し進める4-3-3の布陣がうまく機能した試合とそうでないときとの差が大きいことが結果に表れている。
この新システムのカギになっているのが今季から加入したサミュエル グスタフソンだ。ヘグモ監督の戦術を理解する彼が中盤の底にどっしり構えてボールをさばけるときはチームにも良いリズムが生まれる。
ボールを失うことがほとんどなく、前の選手につけるパスも、スペースに送り込むパスも的確かつ正確だ。彼の代わりが務まるアンカーは現時点で存在しない。そして新戦術に変化をつけるのが中島翔哉の奔放なプレーで、攻撃のアクセントになる。
先の鹿島アントラーズ戦では2人が欠場して前半は大苦戦。
後半にシステムを変えて中盤で引き気味のボランチを2人にする4-2-3-1にして対応したことで、中盤でボールを失うことが少なくなり、ボールを動かせるようになってリズムが生まれた。
そして後半30分過ぎに登場した武田英寿が2ゴールを挙げる決定的な仕事をした。同点としたFKは見事なアイディアと技術が結集したゴールだった。
第17節のヴィッセル神戸戦でもグスタフソン、中島がベンチスタートで、前半は相手に圧倒されたが、後半から2人が登場するとガラリと流れが変わった。
いまのところ、4-3-3はグスタフソンがいないと機能しないし、中島がいないと変化がつかない。
しかし、鹿島戦の後半見られたように、彼らを欠くときには4-2-3-1のオプションが有効だと証明された。後半戦は2つのシステムを併用していくべきだろう。
武田にはさらにプレー時間を与えて、攻撃に変化をつけ、自ら得点に絡むプレーに期待したい。
7月以降の去就が不確定だがオラ ソルバッケンも本領を発揮し始めており、ブライアン リンセンも復調してきた。前向きな要素は多い。逆転優勝は至難の業だが、ファン・サポーターを納得させるプレーを見せて、ひとつずつでも順位を上げていきたい。
それにしてもけが人の多さは何とかならないか。
中島と安部裕葵が揃って本来の調子で躍動したらどんなチームになるか、見てみたい。

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REDS TOMORROW「Red Wind」バックナンバー掲載 #364~#368