89 2024.11.20

REDS TOMORROW
「Red Wind」

バックナンバー
掲載 #377

「REDS TOMORROW」は浦和レッズパートナーの朝日新聞社と浦和レッズが協同発行しているタブロイド紙です。
浦和レッズホームゲームの前日に朝日新聞朝刊に折り込まれます。

REDSDENKI

No.377 10.4発行

原口元気がもたらしている刺激と活気

大住良之 サッカージャーナリスト

 まだ思うようにチームの結果につながっていないが、予想以上かもしれない。10年ぶりにドイツから浦和レッズに戻ってきた原口元気の影響力である。いざ背番号78がピッチに入ると、中盤がぴりっと引き締まる。復帰戦となった9月14日の明治安田J1リーグ第30節ガンバ大阪戦ではクローザーの役割をこなし、リードをしっかり守って1-0の勝利に貢献。2013年、14年にレッズでともにプレーした興梠慎三はかつてのような果敢にドリブルで仕掛けていく場面も見たいと話しながらも、いぶし銀の仕事ぶりに目を細める。
「守備で頑張り、ボールを失いたくない場面でキープするところなどは海外で学んで経験を積んだのかな。成長しましたね」
 続く第31節FC東京戦は2点を追う展開から投入されて孤軍奮闘。「状況を変えたかった」と唇をかんだが、魂のこもったスライディングでボールを奪取するなど、背中で仲間を鼓舞する。そして、第32節ヴィッセル神戸戦では先発出場し、後半途中でベンチに下がるまでヨーロッパでもまれた強度の高いプレーを攻守両面で見せた。昨季、ドイツのVfBシュトゥットガルトで3試合しか公式戦に出場していなかったのが嘘(うそ)のようである。試合勘、ゲーム体力などのブランクを感じさせていない。
 『原口効果』は目に見える部分だけではない。練習から仲間と積極的にコミュニケーションを取り、ベテランとしてドイツで培ってきた経験をチームに還元している。大久保智明はパワーアップを促されて筋力強化に新たに取り組み、小泉佳穂は技術と戦術を超越するメンタリティーの重要性をあらためて学んだという。練習への向き合い方に感化されていたのは二田理央。当たり前のように言われたことをこなすのではなく、自分にとって必要なものを極めるようになっている。「ウォーミングアップのやり方ひとつをとってもそうですし、教えてもらうことは多いです」としみじみと話す。
 そして、何より大原サッカー場でも熱く激しくプレーする姿は、チームに活気をもたらしている。「すごくエネルギッシュなので。良い意味で練習からピリつかせてくれます」。同じ浦和レッズアカデミー出身の関根貴大が刺激を受けないわけがない。少しずつではあるが、レッズを変えつつある。苦しくてもあきらめずに闘志をむき出しにして闘う。昔も今も変わらぬ原口のその執念こそが、いま最も必要なのかもしれない。

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