96 2025.5.30

REDS TOMORROW
「Red Wind」

バックナンバー
掲載 #381~#384

「REDS TOMORROW」は浦和レッズパートナーの朝日新聞社と浦和レッズが協同発行しているタブロイド紙です。
浦和レッズホームゲームの前日に朝日新聞朝刊に折り込まれます。

REDSDENKI

No.381 3.1 発行

ホーム開幕が待ち切れない

大住良之 サッカージャーナリスト

 待ちに待った「ホーム開幕」である。
 Jリーグが始まって33シーズン目、レッズのホーム開幕が第4節まで遅れたのは初めてのことである。2023年には埼玉スタジアムのピッチ改修の関係で第3節に駒場で「ホーム開幕」を迎えたが、それ以外の31シーズンの「ホーム開幕」は、第1節が8回、そして第2節が23回。だが、ことしは第4節まで待たされることになった。
 もちろん、サポーターは神戸にも亀岡にも駆けつけただろう。待ちきれずに水曜夜に平塚まで行ったファンも多いに違いない。そして、ついにJリーグ開幕から2週間、あす、埼スタに姿を現す。「待ちに待った」以外の表現ができるだろうか。
 今季のレッズは6月開幕のFIFAクラブワールドカップ(FCWC)に備えて大補強を敢行、第2節までの2試合では、フィールドプレーヤーの半数、5人が「新加入」の選手たちだった。DFダニーロ ボザ、DF荻原拓也、MF金子拓郎、MF松本泰志、そしてMFマテウス サヴィオ。期限付き移籍からの復帰となった荻原以外の4人にとっては、レッズサポーターに埼スタで大声援を受ける初めての試合となる。彼らも「待ちに待っていた」と思っていることだろう。
 しかも相手は柏レイソル。リカルド ロドリゲス監督と小泉佳穂が、初めて埼スタに「アウェー」として足を踏み入れる。昨季まで柏のエースだったマテウス サヴィオが今季は赤いユニホームを着ていることも、闘志につながるだろう。彼らも、違った意味で「待ちに待っていた」のだ。
 今季、マチェイ スコルジャ監督は守備の整備に手をつけ、チーム全体でハードワークして守り、そこから鋭い攻撃を繰り出すサッカーを模索している。当然、CAリーベル・プレート(アルゼンチン)、モンテレイ(メキシコ)、そしてインテル・ミラノ(イタリア)と戦うFCWCを想定してのものに違いない。
 守備は2試合で1失点。手応えはある。そこからの攻撃が、新加入のマテウス サヴィオを中心に鋭さを見せており、コンスタントに1試合に2点を取る可能性も十分。マテウス サヴィオに触発されて、同じブラジル人のチアゴ サンタナの動きが良くなっているのは心強い。
 「待ちに待った」ホーム開幕戦。もちろん、何よりもサポーターが本当に待っているのは、「レッズの新しい勝ち方」に違いない。

No.382 3.7 発行

キックオフから集中して主導権を握れ

国吉好弘 サッカージャーナリスト

 明治安田J1リーグ第4節を終えて2分2敗と勝利がなく苦しいスタートとなった。開幕のヴィッセル神戸戦では良い入りを見せ、試合を支配して新シーズンへの期待を膨らませながら結果は0-0で引き分け。3節までアウェーゲームが続き、京都サンガF.C.戦では追い付いて1-1で引き分けたが、湘南ベルマーレ戦ではマチェイ スコルジャ監督が「貧相な戦いをしてしまった」と嘆いた前半に圧倒され、後半に立て直したものの1-2で敗戦。そして、初のホームゲームとなった柏レイソル戦でも0-2で連敗した。
 苦戦の理由はいくつもあるが、大きかったのは京都戦の15分にMF渡邊凌磨が相手の激しいタックルで負傷してピッチを去らなければならなかったこと。渡邊は続く2試合に出場できなかった。
 今季のレッズは沖縄でのキャンプから伝わる情報や映像をチェックしても渡邊をボランチに固定してチーム作りを進めていた。明らかに渡邊を中心としたチーム作りをしていたのだ。ところが、昨季J1リーグ全試合にスタメン出場し、J1リーグ最多の走行距離を記録した選手が離脱してしまったことで、シーズンオフに積み上げてきた攻守のバランスが微妙に崩れた。
 柏戦後の記者会見でスコルジャ監督は、続く第5節ファジアーノ岡山戦に向けて「凌磨が戻ってきてくれればと思っています。非常に重要な選手です」と話し、復帰できそうな状況を伝えるとともに良い流れを取り戻すことができる期待をにじませた。
 負傷の状態は明らかにされていないが、復帰できるようなら指揮官が「神戸戦のような戦いを望んでいる」と話したようなプレーを再び実現できるかもしれない。期待の新戦力であるMFマテウス サヴィオやMF金子拓郎は個人で相手を苦しめるプレーを見せているだけに、チームとして狙いのプレスを連動させたい。
 岡山は未知数な相手。プレーオフを勝ち抜いて初めてJ1に参戦しながら4試合で2勝1分1敗、勝点7をつかんでいる。選手たちのモチベーション、プレー強度とも高く、体を張った粘り強い守備は相手に自由を与えない。
 埼玉スタジアムに迎えるこの試合では少なくとも湘南戦、柏戦のような入りをしてはならない。キックオフから集中してスキのないプレーで主導権を握りたい。それができないチーム、選手たちではないはずだ。

No.383 4.1 発行

右サイドバックで新境地を開く関根貴大

杉園昌之 スポーツライター

 ビルドアップのキーマンになりつつある。金子拓郎が右サイドのタッチライン沿いに張ると、中のスペースにすっと入り込み、巧みにパスを呼び込む。サイドハーフから本格的に右サイドバックにコンバートされた関根貴大の表情は、生き生きしている。
「(新しいポジションで)楽しんでいますよ。以前に比べて、プレーの回数は増えましたしね。経験したことがないシチュエーションもよくあります。今は自分のなかで試行錯誤しながら積み上げているところ。自分らしいプレーも出せているけど、よくないプレーも目立ちます」
 キャプテンの重責を担いつつ、29歳にして新境地を見いだそうとしている。3年前にリカルド ロドリゲス監督のもと、酒井宏樹の代役で右サイドバックを経験。それ以降、チーム事情に応じて何度もこなしてきたが、今季は心持ちが違うようだ。新たなチャレンジに意欲を燃やしている。
「決定的な仕事ができる右サイドバックになりたいと思っています。もっと得点に直結するプレーを増やしたいし、ゴールもしっかり守りたい」
 隔世の感がある。かつてはアタッカーへのこだわりが強く、サイドバックに前向きでなかった時期もあった。ただ、そのときから適性を見抜いていたのは、当時浦和の主将だった酒井である。ワールドカップに3度出場した右サイドバックのスペシャリストは、予言めいた言葉を口にしていた。
「将来、タカ(関根)はサイドバックをやっていると思うよ」
 関根本人もよく覚えている。苦笑しながら昔を振り返る。
「言われましたね。自分なりにサッカーキャリアを積んできて、前のポジションでも多くのことを吸収してきた。だからこそ、挑戦できることもあります。監督との巡り合わせもあるし、チーム状況もある。このタイミングで右サイドバックになったことは、ポジティブにとらえています」
 強引に突破していくドリブラーとしてプロデビューしたが、年齢を重ねるごとにプレースタイルを変化させてきた。20代半ばからは中央でパスを受け、積極的に裏に飛び出していく回数も増えた。そのすべてが血肉になり、いまも進化を続けている。関根が完全に脱皮したとき、チームはどう変わるのか。2025年の楽しみの一つだ。

No.384 4.19 発行

手に入れた「攻撃の新オプション」

大住良之 サッカージャーナリスト

 「首位」を相手にどんな試合ができるのか-。不安と期待をもって臨んだ先週のFC町田ゼルビア戦だったが、結果は「快勝」だった。
 前半はかなり押し込まれたが、CKからマリウス ホイブラーテンのゴールで先制し、GK西川周作から始まった中央突破で松尾佑介が追加点。2-0で折り返すと、後半は堅固な守備で試合をコントロールし、無失点で押し切った。
 この試合で目を引いたのは「ワントップ」に入った松尾のプレーだった。スピードを生かして左右のスペースに走る松尾に町田の守備陣がかき回され、両ボランチのサミュエル グスタフソンと安居海渡、そして「トップ下」の渡邊凌磨を加えたレッズが中盤で優位に立つことができた。
 これまでは、チアゴ サンタナに目がけてのパスが攻撃の第1歩だったが、そこに収まらないとなかなか形ができなかった。しかし松尾をワントップに置いたことでスペースへのパスが増え、渡邊の活躍もあって生き生きとした攻撃が続いた。
 しかしこのような展開になった背景には、「先制点」がある。リードした状態だったから、相手DFラインの外側や背後のスペースを有効に使うことができ、カウンターアタックも効果的だったのだ。同点、あるいはビハインドの状況であれば、簡単にはスペースを使わせてくれないし、速攻にも対応されるだろう。
 「松尾のワントップは、相手によって良いオプションになる」と、試合後、マチェイ スコルジャ監督は冷静に話した。この試合でうまくいったことがどの相手にも通じるわけではないと理解しての発言だった。
 しかし1パターンしかなかった攻撃に新オプションができ、それが町田のような堅守を脅かすほどの力をもっていることが証明できたのは、この試合の大きな収穫だった。
 西川、ホイブラーテン、ダニーロ ボザの3人でつくる守備のトライアングルは堅固で、前線からの守備組織も整備されてきた。これに、対戦相手や状況による2つのタイプの攻撃が用意できたことで、チームはまた1歩前進した。
 10節までに「首位チーム」が7つも誕生し、「大混戦」の模様を呈し始めた今季のJリーグ。やや出遅れたレッズだったが、まだまだタイトル争いをあきらめる必要はない。1試合1試合、勝利を積み重ねていくだけだ。

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REDS TOMORROW「Red Wind」バックナンバー掲載 #377