98 2025.6.17

REDS TOMORROW
「Red Wind」

バックナンバー
掲載 #385~#387

「REDS TOMORROW」は浦和レッズパートナーの朝日新聞社と浦和レッズが協同発行しているタブロイド紙です。
浦和レッズホームゲームの前日に朝日新聞朝刊に折り込まれます。

REDSDENKI

No.385 5.2 発行

4連勝で固まったチームの基盤

国吉好弘 サッカージャーナリスト

 浦和レッズが明治安田J1リーグ第12節サンフレッチェ広島戦で1-0の勝利をおさめ、4連勝で暫定3位に浮上した。4試合のスタメンはすべて同じ11人で、ある程度チームの基盤が固まったといえる。
 好結果の要因は一つではなく、まずディフェンスの安定。ダニーロ ボザがチームとJリーグでのプレーに慣れ、マリウス ホイブラーテンとの連係がスムーズになり、両サイドバックには右に石原広教、左に長沼洋一が定着して確実な守備を見せている。
 攻撃ではチアゴ サンタナが離脱したことで松尾佑介が1トップを務め、裏へ抜け出すスピードが生かされた。両サイドのマテウス サヴィオと金子拓郎も本来の持ち味を発揮できるようになり、それぞれゴールも挙げた。
 そして中盤の中央ではサミュエル グスタフソンと安居海渡のダブルボランチが確立され、トップ下に上がった渡邊凌磨はエースとして君臨、チャンスを演出してゴールも決めている。カギとなったのはグスタフソンがこのシステムで持ち味を発揮し、守備にも貢献する成長を示したことだ。マチェイ スコルジャ監督との長いミーティングが話題になったように、指揮官の要求を突き詰め、理解して実践できるようになった。
 苦戦が続いた頃から4連勝への変化について、指揮官も「何が改善されていたかというと、ディフェンスラインと中盤、特に中央での関係性が良くなっています。中央が安定することは、攻撃の選手にとってもいい状況です」と手応えを口にしている。
 終盤にメンバーを入れ替えるとリズムが悪くなる点は課題だが、結果を残し続けることで解消される部分もある。運動量の多い松本泰志らを効果的に使いこなすことも必要だろう。
 サンタナが復帰した後にどう組み込むかということも気にかかる。松尾とはタイプが異なり、力があることは言うまでもないので、指揮官の采配がカギを握るだろう。使いどころが的確であればチームにとって新たな戦力アップとなるはずだ。
「よりリスクを冒しながら攻めて、同時にFIFAクラブワールドカップまでに、できるだけ多くの勝ち点を取っていきたい」(スコルジャ監督)という言葉の実現に期待したい。

No.386 5.16 発行

数字以外の貢献度も高い松尾佑介

杉園昌之 スポーツライター

 今季、松尾佑介が先発出場した試合の勝敗は6勝2敗1分け(明治安田J1リーグ第16節終了時)。レッズに勝利を呼び込む男として、いまや欠かせない存在になっている。9年ぶりの5連勝がスタートした4月13日から1トップに入り、八面六臂の活躍。FC町田ゼルビア戦で持ち前のスピードを活かしたロングカウンターから今季初得点をマークし、京都サンガF.C.戦では技ありの股抜きゴールを決めた。
 圧巻だったのは東京ヴェルディ戦。あえて斜め後ろに下がるカットインで鮮やかにゴールネットを揺らし、今季最多の5万2429人が詰めかけた埼玉スタジアムを熱狂の渦に巻き込んだ。
 多彩な得点バリエーションには目を見張るばかり。点取り屋として覚醒した印象を受けるが、1試合を通した仕事ぶりは専門家のそれとは違う。
「僕はもともとサイドの選手なので、外側のスペースに流れても、前を向いて仕掛けていける。いまはシンプルなプレーとうまく使い分けもできています」
 前線での仕事の幅はどんどん広がっている。当初は裏に抜ける動きが目立ったが、1トップに慣れてくると、前線で起点をつくる役割も高いレベルでこなす。1.5列目の位置まで下がってボールを受けると、巧みなスルーパスで決定機も演出する。
「裏一辺倒では相手に対応されますからね。つねに変化していかないといけない。チャンスメークに厚みをもたらすことは、意識しているところです」
 自身のゴールへの意欲ものぞかせるが、優先するのは勝利から逆算したプレー。ゴール前でボールを受けても、得点の可能性が高い選手に迷わずパスを送る。おとりの動きでスペースに走るのもいとわない。
「味方のためにプレーしていれば、自分にもチャンスが巡ってくるもの。一人の選手で何十点も取るより、複数の選手で10点以上取るほうが相手も守りづらいはず」
 今季からは意識的にチーム全体にも目を向けるようにしている。仲間への声掛けもすれば、ときにはハッパもかける。すべては目標に掲げるJ1リーグ優勝のためだ。連勝が止まっても、動じることはなかった。
「1回負けて、ノックダウンするわけではない。リーグ戦は最後まで走り切ることが大事。改善しながら進んでいきたい」
 力強い言葉には、チームを勝たせる責任と自覚がにじんでいた。27歳を迎えた松尾は、データで見えない貢献度も高い。

No.387 5.31 発行

J1リーグ後半戦への明らかな課題とは?

大住良之 サッカージャーナリスト

 5月24日にあった明治安田J1リーグ第18節、雨の名古屋グランパス戦。この試合はレッズにとって今季の19戦目だった。レッズは早くもJ1リーグを折り返したことになる。もちろん、FIFAクラブワールドカップ2025(FCWC)出場による変則日程。そこで今回は、レッズの「J1リーグ2025前半戦」を振り返り、「後半戦」を考えてみる。
 今季のレッズは開幕から4戦勝ちなしと出遅れた。2月26日の湘南ベルマーレとのアウェー戦は、「力の差」を見せつけられるような完敗だった。
 第5節のファジアーノ岡山戦で初勝利をつかみ、以後は粘り強さが出たが、大きく変わったのは、4月13日に国立競技場で行われたFC町田ゼルビア戦。松尾佑介をワントップに、そして渡邊凌磨をトップ下に起用する新布陣が生き、2-0で快勝。以後、5月3日の東京ヴェルディ戦まで5連勝、順位も3位まで上がった。
 マリウス ホイブラーテンと新加入のダニーロ ボザを中心とする守備は堅固で、松尾、渡邊、そして新加入のマテウス サヴィオと金子拓郎を並べた攻撃陣のコンビネーションも良くなり、この時期のレッズはJ1の20クラブ中、最も充実していた。
 ただ不安もあった。5連勝中の4試合は先発がまったく変わらず、この11人での試合なら「チャンピオン」でも、試合の終盤に選手交代をすると、戦力が落ちるのは明白だったのだ。
 5月6日にガンバ大阪に敗れて連勝が止まると、「連戦」という要素とともにFCWCに向けてチームの底上げをはかるべく、マチェイ スコルジャ監督は4月には先発の機会がなかった選手を試合ごとに数人入れてテストを繰り返してきた。その結果は、5月11日のアルビレックス新潟戦から4戦で1勝2分1敗。レッズの「選手層」が十分でないのは明らかであり、そこにこそ、「リーグ後半戦」に向けての最大の課題がある。
 「4月の11人」のほかに、出場したら個性を発揮してチーム力を上げられる選手が何人生まれるか。もしかすると、数人の補強も必要かもしれない。2025シーズンのJ1リーグでの成否は、この一点にかかっている。
 FCWCから帰国すると、7月下旬には「日程調整」を含む3連戦があるが、8月以降は他のクラブと同じスケジュールで試合をこなすことができるようになる。選手層の増強に成功すれば、レッズが2006シーズン以来の歓喜をサポーターにもたらすことは十分可能だ。

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REDS TOMORROW「Red Wind」バックナンバー掲載 #381~384